COBとは?SMDとの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説
ガイドCOBLEDビジョン

はじめに
「LED」と一口に言っても、その中にはさまざまな種類があります。
中でも近年注目されているのが「COB(Chip on Board)」と呼ばれる方式です。
従来のDIP(Dual Inline Package) やSMD(Surface Mount Device) と何が違うのか、どんな場面で選ばれるのかなど、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、LEDの基本からCOBの仕組み、他の技術との違い、そして選び方までをわかりやすく解説いたします。
LEDディスプレイの導入やLEDサイネージの設置を検討している方は必見です。
目 次
LEDとは?基礎知識のおさらい
LED(Light Emitting Diode / 発光ダイオード)は、電流を流すと発光する半導体素子の一種で、電気エネルギーを直接光に変換するエレクトロルミネッセンス (EL) 現象を応用した照明・表示デバイスです。
一般的な白熱灯や蛍光灯とは異なり、フィラメントを加熱したり、ガス放電を利用することなく、物理的・化学的な反応によって光を発するため、効率や耐久性に優れています。

1. LEDの仕組み
LEDは主にn型半導体とp型半導体の接合によって構成され、これをpn接合と呼びます。
電圧を加えることで電子と正孔(ホール)が接合部で再結合し、その際に余分なエネルギーが光子(フォトン)として放出される―これがLEDの発光原理です。
発光する光の波長(色)は、この半導体のバンドギャップエネルギーによって決まり、材料により赤・緑・青・紫外線・赤外線などが生成されます。

2. LEDの構造と種類
LEDチップ単体では微弱な光しか出せないため、通常は以下のような構造になっています。
- チップ(発光素子):GaN系やInGaN系の半導体が多く用いられる
- 基板・リードフレーム:放熱性や導電性を担う
- 蛍光体コーティング:青色LEDに黄色の蛍光体を重ねて白色を実現
- レンズ・樹脂封止:光の拡散性や耐久性を高める

3. LEDの特徴・メリット
LEDには以下のような特徴やメリットがあります。
- 省エネルギー性
電気エネルギーを光へと直接変換する効率が非常に高く、白熱灯の20%以下の消費電力で同等の明るさを実現できます。 - 長寿命
一般的な白熱灯が1,000〜2,000時間、蛍光灯でも10,000時間程度の寿命であるのに対し、LEDは平均で50,000〜100,000時間の連続使用に耐えると言われています。
また、点灯回数による劣化もほとんどありません。 - 即時点灯
白熱灯や蛍光灯は、スイッチを入れてから徐々に明るくなる性質がありますが、LEDはスイッチONと同時に0.1秒以下で最大輝度に達する瞬発性があります。 - 環境負荷が少ない
LEDには水銀や鉛などの有害物質が一切含まれておらず、リサイクル性に優れています。
また、発熱量が非常に少なく、放射熱が約1/5程度に抑えられるため、周囲の空間に熱を与えにくく、空調への負担を軽減できます。 - 高耐久性
ガラス管やフィラメントを用いないソリッドステート構造(固体素子)であるため、物理的な衝撃・振動に強く、輸送・施工時の破損リスクが低減されます。
さらに、-30℃〜+50℃程度の広い温度環境にも耐えることができ、屋外での使用や高温多湿な環境にも対応可能 です。
LEDの主な実装方式 DIP・SMD・COBの違い
LEDとひと口に言っても、その実装技術や発光方式には複数の種類があります。
なかでも過去に主流だったDIPと現在主流のSMD、近年急速に注目を集めているCOBには、大きな違いがあります。
※ 表は横にスクロールできます
COB (Chip on Board) | SMD (Surface Mount Device) | DIP (Dual Inline Package) | |
---|---|---|---|
特徴 | 複数のLEDチップを基板上に直接実装 | LEDチップを基板表面に直接ハンダ付けする、表面実装デバイス | 砲弾型に成形され、指向性が前方の角度に強い |
発光方式 | 面発光(均一な光) | 点発光 | 点発光 |
輝度 | 600~3500 cd | 3500~7000 cd | 7500~10000 cd |
放熱性 | 高い(熱を分散しやすい) | 標準 | 低い〜標準 |
発光ムラ | 少ない(自然な光) | 起きやすい | 起きやすい |
修理性 | モジュール単位の交換 | チップ単位で交換 | チップ or モジュール単位(用途による) |
主な用途 | 作業灯、スポットライト、屋内用LEDビジョン、デジタルサイネージ | テレビ、間接照明 | 看板、信号、カーライト、イルミネーション |
COBは単体でも優れた性能を持っていますが、近年ではMini LEDやMicro LEDと組み合わせたハイブリッド技術が進化を遂げつつあります。
たとえば、Mini LEDチップをCOB基板上に高密度実装する「COB-Mini LED」構造では、輝度・放熱性・省スペース性のすべてを両立した新世代ディスプレイが登場しています。
このようなハイブリッド実装は、今後の8K超高精細ディスプレイやフレキシブルサイネージ、曲面型表示装置など、多様な応用に対応できると注目されています。
COB(Chip on Board)とは?
高密度実装による高性能・高演出性を両立する次世代のLED技術
COB(Chip on Board)とは、複数のLEDチップを基板(ボード)に直接実装し、発光モジュールとして一体化した先進的な実装方式です。
従来のDIPやSMDと比べ、構造そのものが根本的に異なるため、光の質、耐久性、表現力において大きく優れています。

メリット
- 高輝度かつムラのない面発光
COBの最大の特長は、多数のLEDチップが極めて高密度で配置されることで、面全体が均一に発光する点です。
このムラのない均一な発光は、高精細な映像表現や繊細なグラフィック表示に非常に有効で、特にショールーム・ブティック・百貨店など、“ブランドの価値を視覚で魅せる”空間で力を最大限に発揮します。 - 超近距離での使用にも対応
COBは、LEDチップ同士の隙間を極限まで縮められるため、ピクセルピッチ(画素の間隔)を1mm以下まで狭めることが可能です。
その結果、ショーケースや室内イベントなど、超高精細な表示が求められる近接ディスプレイにも柔軟に対応できます。
従来のLEDディスプレイでは、解像度の限界により“近づいて見ると粗さが目立つ”という課題がありましたが、COBではこの問題を完全に克服しています。 - 放熱性に優れ、長寿命
LEDチップを直接基板に接合する構造であるため、放熱効率が極めて高く、温度上昇による性能劣化を大幅に抑制できます。
結果として、LED素子そのものの劣化が抑えられ、長寿命化・メンテナンス頻度の低減が可能になります。 - 光が自然
COBは面全体で発光するため、自然光に近い柔らかな光を放ちます。
また、演色性(CRI)が高い製品も多く、色再現性に優れ、店舗の陳列物や広告コンテンツの色味を忠実に表現できます。
ファッション、食品、美術の展示など、色の見え方が購買に直結する業界では非常に有利です。 - 省エネルギー
COBは必要最小限の発光体で最大限の輝度を確保することができます。
これにより、省エネルギーとインパクトを両立した広告・演出が可能です。 - 耐衝撃性・防塵性・防水性も高く、多様な環境に対応
COBは、チップが露出せず、樹脂やガラスで一体化される設計が可能なため、物理的な耐久性にも優れ、粉塵・湿気などへの耐性も高いという特長があります。
これにより、屋外広告や工場・倉庫、レジャー施設、さらには多湿な海辺のリゾート地などでも使用可能で、導入場所を選ばない柔軟性を実現しています。 - コンパクトな設計でデザイン自由度が高い
COBは小型モジュールに高密度な光源を詰め込めるため、薄型・軽量設計がしやすく、スペースを取らないのも魅力です。
これにより、ガラス面への貼り付け型LEDや、柱などの局面、天井への隠し設置など自由度の高い設計が可能になります。
デメリット
- 修理やメンテナンスはSMDに比べて簡単だが、予備のモジュールが必要
COBはモジュール単位でLEDチップが密集している構造のため、万が一の故障時にはSMDのようにチップ単位での交換ができず、モジュール全体の取り換えが必要なため予備のモジュールを準備しておく必要があります。
- 初期コストはやや高くなることが多い
COB LEDは製造技術や放熱設計が高度であり、品質も高い分、初期導入コストがSMDよりも高めになることがあります。
しかし、長寿命で省エネ性も高いため、トータルコストでは回収可能なケースが多く、ランニングコストを抑えたいBtoB用途(商業施設・交通機関・展示会など)には長期的に有利です。 - 一部の照明器具やコントローラーとの相性に注意
COB LEDは高密度発光・高出力設計のため、既存の照明器具やドライバとの互換性に制限がある場合もあります。
導入時には、対応機器のスペック確認や調光対応の有無など、細かなチェックが必要です。
特に、後付けでLEDを置き換える場合には、施工業者との事前確認が不可欠です。
近年では、COB技術を応用した透明LEDフィルムの開発も進んでおり、高密度な発光と優れた透過性の両立が実現しつつあります。
これにより、“透明な光の壁”のような未来的な広告表現が可能となり、COBは単なる高性能LEDにとどまらず、空間演出やブランド体験の質を高める技術として、今後のBtoB・BtoCマーケティングにおいて大きな武器となるでしょう。
COB LEDが活躍する具体的な用途
COB LEDは、特に省スペースで高輝度を実現したい現場において、従来のSMD型LEDを大きく上回るパフォーマンスを発揮します。
以下では、COB LEDが活躍する具体的な業界・用途別に、その技術的優位性と導入メリットを解説します。
アパレルショップのウィンドウ広告
COB LEDは高い演色性(CRI)を誇るため、服の質感や色味を忠実に再現する光が求められるファッション業界で高評価を得ています。
とくにハイブランド店舗では、商品そのものが光によって魅力を左右されるため、明るすぎず、かつムラのない美しい照明が必須です。
COBの面発光特性により影が出にくく、対象物を自然に浮かび上がらせる演出が可能です。
展示会ブース・ショールームの演出
展示会やショールームでは、限られたスペース内でいかに印象的な演出を行うかが勝負となります。
COBは小型で高輝度なため、目立ちにくい場所に設置しても強い発光効果を得られるのが強みです。
また、光のムラが少ないため、大型モニターや装飾壁に組み込んだ場合でもコンテンツを均一に照らすことが可能です。

屋外サイネージ・大型LEDビジョン
COBのもう一つの得意分野が屋外向けの大型LEDディスプレイです。
従来のSMD方式では発光点が分離して見えやすく、視認距離によってはちらつきや粒状感が出ることも多いのですが、COBは密集したLEDチップを基板に一体化しているため、画素密度が高く、より滑らかな映像表示が可能になります。
また、放熱性能にも優れているため、長時間稼働する屋外ディスプレイや電子看板での使用にも適しています。
撮影・スタジオ照明(映像制作・放送業界)
映像や写真撮影において、照明はクオリティを大きく左右する要素です。
COB LEDは高演色性(CRI90以上)かつ、自然な色再現ができるため、人物の肌色・商品の質感を忠実に描写することが可能です。
SMDに比べてノイズの少ない均一な光を得られるため、映像編集時の色補正の手間も軽減されます。
多くのプロフェッショナル用照明メーカーがCOBベースの製品を採用しており、映像制作現場でも事実上のスタンダードになりつつあります。
医療現場・精密作業のための作業灯
COBの面発光特性と高演色性は、医療用ライトや工業系の作業照明にも最適です。
影が出にくく、長時間の作業でも目が疲れにくい自然な光を提供できるため、外科手術、歯科治療、電子基板の検査・修理といった細かい作業においても活躍。
また、発熱が少なく器具の表面温度も上がりにくいため、作業環境の安全性にも貢献します。
長寿命かつメンテナンス頻度が低いことから、医療機器・検査装置にも多数採用実績があります。
このように、COB LEDは高輝度・高演色・高効率・省スペースといった特徴を生かし、あらゆる業界の現場で価値を発揮する次世代照明技術です。
とくに「見た目の印象が売上に直結する業種」や、「設置スペースに制限があるが、明るさを確保したい現場」では、COBが選ばれるべき選択肢といえるでしょう。
COB LED導入の際に気をつけるポイント
COB LEDを最大限に活用するためには、設置前の計画と環境評価が非常に重要です。
高性能であるがゆえに、導入時に注意すべき点がいくつかあります。
1. 熱対策を考慮した設置環境
COBは密閉空間や屋内の高温環境下では、放熱が十分でないと寿命や性能に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、ヒートシンクや自然通風、場合によってはファンなどを活用した放熱設計が重要です。
設置場所の通気性・温度環境を事前に確認し、必要であれば専用の熱拡散パネルなどを取り入れましょう。
2. 視認距離と設置スペースの最適化
COBは非常に高輝度かつ均一な光源であるため、適切な視認距離を取ることで最大限の効果を発揮します。
近すぎると眩しすぎたり、遠すぎると意図した印象が薄れることもあるため、目的に応じた距離設計が必要です。
また、COBユニットはコンパクトながら冷却構造を含めるとある程度の設置スペースが必要となります。
壁面や天井など、設置する箇所の構造や配線経路も事前に確認しておきましょう。
3. 信頼できるパートナーの選定
COBはまだ普及初期段階にあるため、設計・施工ノウハウを持つ業者の存在が極めて重要です。
安価な製品や未検証のモジュールなども出回っており、性能差・信頼性の違いは一目瞭然です。
導入時は、過去の導入実績や設置環境に対する対応力をもとに、パートナー企業を慎重に選定してください。
特にアフターサポート・メンテナンス体制の有無は、長期的な運用コストにも直結します。
4. コストだけで判断しない
初期導入費用が若干高めになるCOBですが、消費電力の少なさや長寿命設計、演出効果の高さを考慮すれば、トータルでは高いコストパフォーマンスを発揮します。
「価格」だけに目を向けず、ランニングコスト・メンテナンス性・設置の柔軟性などを含めた総合的な導入評価が求められます。
【まとめ】COB LEDは“映える”空間づくりの新常識
COB LEDは、従来のSMD方式や他のLED技術に比べて、視認性・演出力・省スペース性で優れたパフォーマンスを発揮する新世代の光源技術です。
その均一な面発光と高輝度特性は、ただの照明・表示にとどまらず、“映える”空間演出やブランド価値の向上に直結する表現力を持っています。
これまで表現できなかった「明るくて自然な光」「立体的で奥行きある映像」「静かな高級感のある照明演出」などを可能にし、商業施設・展示会・レジャー空間・撮影スタジオなど、あらゆる場所で活用の幅が広がっています。
また、COBはMini LEDやMicro LEDとの技術融合により、さらなる進化が見込まれており、今後のLEDディスプレイ市場を牽引する存在になると考えられています。